関東消化器内視鏡技師会 第20回レベルアップ講習会に参加してきました。
消化器内視鏡に関する基礎講義では、内視鏡検査と診断、内視鏡的治療について学ばせていただきました。
―高齢者のESDについて―
食道や胃、大腸の壁は粘膜層、粘膜下層、筋層の3層からできており、癌は粘膜層から発生します。早期の病変に対して、胃カメラや大腸カメラで消化管の内腔から粘膜層を含めた粘膜下層までを剥離し病変を一括切除する治療法ESD 内視鏡的粘膜下層剥離術は、画期的な治療法として確立されております。一括切除により局所の再発率を下げることが出来るようになり、さらに顕微鏡による正確な病理診断が出来るようになります。当院ではESDは実施しておりませんが、今回講習会に参加することによりESDの治療適応、実施方法、ESDのメリット及び偶発症について学ぶことが出来ました。特に高齢者では生理的特徴を理解し、術前における十分なインフォームドコンセントと全身状態を併せて、適切な治療方針を立てる必要性を学びました。高齢者は術中・術後のバイタルサインが変化しやすくなるため、特徴を踏まえ十分な観察及び安全管理を行う必要性があると感じました。また高度な技術を必要とするため、偶発症の危険性を理解し必要な知識や技術を習得していく必要性があると感じました。
―胃・十二指腸・空腸の止血術―
消化管出血に対する止血術では、出血の原因病変、アナムネ聴取、出血に対する検査及び救急初期対応について学びました。中でも特に関心を持った内視鏡止血術がありましたので紹介させていただきます。
講義して下さった医師の病院では、消化管出血に対し内視鏡中に視野確保が困難になった時に透明なゼリー(経口補水液 OS-1ゼリー)を鉗子口から注入し視野確保を行い、止血術を行っているそうです。ゼリーで満たされた空間は透明になり、出血点が見つかりやすくとても有効な方法とされているそうです。
事前情報から出血点を予測し、安全でより効果的な内視鏡治療を工夫しながら行っていくことが大切になると感じました。
―大腸ポリープに対する内視鏡治療戦略―
近年は大腸癌が増え続けており、男女とも罹患率・死亡率ともに上位を占めております。しかし、40歳以上が対象となる大腸がん検診(便潜血検査)の受診率は25%~30%と低く問題となっております。今回受講し、大腸がん検診の受診率の低さに驚きました。藤沢市でも今月から大腸がん検診が始まりました。是非対象になっている方には検診を行っていただき、病気の予防・早期発見・早期治療を行って欲しいと思います。
大腸内視鏡検査の質を向上させるためには、腺腫検出率(ADR)を25%以上に上げ癌の発生や死亡率を低下させること、さらに検査時における盲腸到達率を90%以上に努め、ガイドラインに沿った適切な検査間隔の設定をすることが大切になることを学びました。最小の検査回数で最大の大腸癌予防効果を得るためには、ADRの向上につとめ、発見した腫瘍性ポリープの全摘出(クリーンコロン)を目指し、再発を起こさない丁寧な観察及び適切な治療が必要になることを学びました。
大腸ポリープの治療法の中にコールドポリペクトミーというものがあり、当院でも昨年から取り入れ実施しております。10ミリ以下の良性腫瘍に対して有効であり、術後の後出血や穿孔が起こりにくいため安全性が高く、完全切除率も高いと報告されております。どの治療法に関しても、看護師は切除方法の特徴と合併症についての適切な知識を持っておく必要があると感じました。またポリープの遺残が起こらないように丁寧に一括切除を行う方法(処置具の使用方法など)を改めて学ぶことが出来、今後に活かしていきたいと思いました。
湘南藤沢おぬき消化器クリニック
主任看護師 森山