第80回日本消化器内視鏡技師学会へ参加して
第80回日本消化器内視鏡技師学会へ参加して
平成30年5月11・12日に渋谷にて行われました第80回日本消化器内視鏡技師会へ参加してまいりました。
今回の学会は「内視鏡の進化と融合」~何を残し未来へ向かいますか?~をテーマに講演や発表が行われました。内視鏡をとりまく世界や日本の流れを肌で感じ、その中で我々クリニックでは何ができるのか、何をするべきなのかを考える良い学びの場となりました。
まず先端治療分野では、AI(人工知能)による画像診断や、ロボット技術による治療の開発についての講演がありました。まだ実用化はされていませんが、人の目では見逃してしまいがちな小さく目立たないポリープなどをAIで高率に検出し、検出したポリープが良性か悪性かまで蓄積した情報をもとに判断できるまでに開発が進んでいるそうです。また治療機器も進化しており、内視鏡の先端にロボットアームをつけたものや、遠隔操作できるものなどの開発が進められているそうです。患者さんへの負担の少ない内視鏡での治療の幅を広げようと、医師や企業が切磋琢磨していることを学びました。
そして、治療技術の進化はなによりですが、一番重要なのは予防と早期発見です。いくら治療技術が進んだと言っても、癌にならないことに勝るものはないと思います。当院が担っていく役割としては、この予防と早期発見の部分です。
その部分の大きな進化としては、平成28年度より胃がん検診として胃カメラが実施できると国で決まりました。これは、とても大きな進化だと思います。各自治体で体制づくりを行い順次開始していきます。横浜市ではすでに開始しており、藤沢市も数年のうちに開始される予定です。しかし、それを受け入れることになる病院や各市町村の医師会は、クリアしなければならない多くの課題が予想され、大きく動揺しました。先行モデルとして開始した自治体の戸惑った現場の様子が発表されていました。藤沢市で開始となった場合、当院でも混乱が予想されるので、スムーズに対応できるよう今から準備しなくてはと感じました。まずは検診を受けられる方の、安全・安心・安楽を担保するのはもちろん、希望される方全てに対応できる体制づくりを進める必要があると強く感じました。
胃癌患者の98%はピロリ菌に感染していると言われ、胃がんは早期であれば内視鏡治療で完治します。自覚症状が出現した時には、すでに進行胃がんであることがほとんどです。無症状のうちに胃カメラをすることが重要であると、国も動き出しております。そしてピロリ菌の保菌者はピロリ菌の除菌を忘れてはなりません。AIなどの技術開発分野の発展も素晴らしいですが、大多数の地域の方々の健康維持のお手伝いがクリニックの役目だと思っております。大切な人と大切な時間を過ごすために、症状がなくても胃カメラに足を運んでいただければと思います。当院では、迅速に対応させていただきます。
胃がんは、『まずはピロリ菌の除菌で予防。そして定期的な胃カメラで早期発見』です。私たちは今後も皆様に強く発信していきたいと思っております。皆様のそばにいる大切な人にも伝えていただければと思います。
湘南藤沢おぬき消化器クリニック
内視鏡技師 宮本
第38回 神奈川消化器内視鏡技師研究会に参加してきました
先日、第38回 神奈川消化器内視鏡技師研究会に参加してきました。
今回の研究会ではコミュニケーションの大切さと多職種との連携について学ぶことが出来ました。
安心・安全な検査、治療を提供するためには、専門的知識・技術、各種業務の遂行、内視鏡室及び院内の環境整備だけではなく、患者情報の共有が大切になると感じました。
当院では鎮静剤使用の患者さんが多いため、検査中・検査後の患者情報を受付スタッフにも伝え、医師・看護師からの注意事項の指導だけではなく、待ち時間での声掛けや観察を行うようにし対応しております。
発表施設の中には、インカム導入が有効になったとしております。クリニックではありますが、当院でもインカムを導入しスタッフ間で情報共有を行っております。インカムを導入することで、スムーズな情報伝達(報告・連絡・相談)が出来るようになり、院内でスタッフを探さなくても的確に指示し受けることが出来、業務の効率化をはかることが出来るようになったと感じます。今後も安心・安全な検査、治療の提供のために全スタッフでの連携を大切にしていきたいと思います。
当院では大腸内視鏡検査洗腸剤の飲用を自宅または院内での選択にしております。最近では院内下剤を希望する患者さんが増えてきており、部屋の確保や院内下剤の優先度など課題点もみえてくるようになりました。
発表施設の中には、大腸内視鏡検査の洗腸剤の適切な院内飲用の基準判断について考察しており、この学びを今後の判断基準に活かしていきたいと思いました。
当院では看護師・受付が検査説明及び下剤説明を行っております。
院内下剤を勧める基準として、初めての検査、事前説明に来院出来ない、説明時の理解度、高齢、ADL低下、便秘症状、住まいが遠方、希望者に対して院内下剤をお勧めしております。
患者の理解度、精神状態、服薬状況、腹部症状、ADL、生活背景を判断する必要があり、日々の説明の中でその場で判断する難しさも感じます。安全に下剤飲用が行われ、円滑に検査が出来るためにも判断基準となる指標を表すことが大切になることを学びました。
また、当院の大腸内視鏡検査が出来る判断基準として『排便回数10回以上、便器の底が見える程度』として検査説明を行っております。院内下剤の方には看護師が声を掛け判断し、自宅下剤の方には受付が電話連絡を行い判断しております。目に見えない自宅下剤の方に対し、電話連絡を行うことで患者さんの体調や下剤の進行状況を知ることが出来、円滑な検査が出来ていると感じます。
今回学んだことを活かし、安全・安心、かつ円滑に検査が出来るように今後も取り組んでいきたいと思います。
平澤医師による特別講演では、内視鏡で癌を中心とした診断から治療まで、日常診療で大切になる点について講義して頂きました。
現在健診の普及などから早期がんの発見が増えてきており、発見される癌の6割がステージ1と診断されています。早期がん発見のために、消化器内視鏡では画像強調観察技術NBI(狭帯域光観察)が有効とされています。中でも特に喉頭、咽頭、食道の観察に有効とされ発見率が向上すると言われています。
日常診療ではNBIを含めた拡大内視鏡での観察及び診断が不可欠になることを学びました。従来の白色光による内視鏡観察では判断しにくい病変も、NBIの使用及び拡大観察により粘膜表面の微細な模様や血管構造まで観察することが出来、病変の境界線を明瞭化することで診断精度の向上につながることを学ぶことが出来ました。
この講義を聞きクリニックでの内視鏡検査の役割として、早期発見による予防医療、また的確な内視鏡診断と適切な治療法の選択にあると考えました。
今回の研究会で得た学びを、今後に活かしていきたいと思います。
湘南藤沢おぬき消化器クリニック
看護師 森山
IBDマネージメントフォーラム ~潰瘍性大腸炎と開業医はどう向き合うか~
2月25日に京都で行われたIBDマネージメントフォーラムに参加してまいりました。当院でも多くの潰瘍性大腸炎の患者様の診療に当たっており、この様な学会は開業医の私にとって非常に有益な情報を得られる場であります。
本会では、主に現在増加の一途をたどっている潰瘍性大腸炎に対しての基本的な治療方針の確認や、地域医療として病院と開業医との連携方法などを中心に議論が行われました。
診療所としてどこまでの治療が可能か、また高次医療機関へ患者様を紹介するタイミングや、地域医療の中で診療所と病院が密に連携を取り合って治療を行って行く重要性などに関して様々な先生の意見を聞くことが出来、大変有意義な時間となりました。
本会に参加して強く感じたことは多くの開業医の先生が潰瘍性大腸炎を通院のみで治療することに強い熱意をもって診療されているということです。
現在潰瘍性大腸炎の診断や治療における進歩は目覚ましく、以前は入院が必要だった方でも通院での治療が可能となってきています。
潰瘍性大腸炎の患者様の8~9割が、10代~30代での年齢で発症されており、普段は学校に通われていたり、仕事をされているケースが殆どであります。そのため、「入院ではなく通院で治療が出来るかどうか」は、患者様にとって非常に重要です。
これは今の潰瘍性大腸炎の治療の大きな流れであると思います。
私も新たな知識を積極的に取り入れ、開業医として可能な限り通院で治療が完結できる様、熱意をもって診療にあたらなくてはならないと強く感じました。
湘南藤沢おぬき消化器クリニック
院長 小貫 建一郎
内視鏡機器取り扱い講習会(基礎編)
内視鏡機器取扱い講習会(基礎編)
先日、内視鏡機器取扱い講習会(基礎編)に参加し、内視鏡機器に対する「原理、構造、維持、消毒など」の取扱いに関する講義を受講してきました。
内視鏡機器は精密なため、取扱いには十分な注意が必要です。そして、正確な内視鏡診断や治療を行うためには、内視鏡機器の正しい取扱いも重要となります。
内視鏡機器の機能と原理を把握したうえで、各種機能の点検を実施し安全で安心出来る内視鏡検査が行われるように、今後も努めていきたいと感じました。
また、日々の事前点検をスタッフ間で共有していく必要性を改めて学ぶことが出来ました。
当院でもスコープ挿入部の外観点検や湾曲機構の点検、吸引及び送気・送水機能の点検を日々の検査前後に全スタッフ間で統一して行っております。また、オリンパス担当者とも連携をとり定期点検を行いアドバイスに沿ってトラブルの早期発見・対応に努めています。
今後も検査前後の点検や定期点検をしっかりと行い、トラブルを未然に防ぎ機器の維持管理が出来るように努めていきたいと思います。
ガイドラインに沿った基礎的な洗浄・消毒・滅菌方法についても再確認することが出来ました。当院でも医師・看護師間でのマニュアル統一化をはかり実施しております。
経鼻用のスコープは5㎜程度の極細チューブのため、使用後の洗浄及びすすぎが不十分の場合は汚れによって詰まる場合があります。当院でも何度か目詰まりを起こしてしまい、その都度洗浄方法を見直してきました。酵素系洗浄剤にスコープ全体を浸漬させ、全管路内が洗浄剤で満たされるようにし、浸漬時間を5分以上行うことで継続的なトラブル回避に繋がり効果を得ることが出来ました。また、リユーザブル処置具の滅菌についてはガイドラインに沿って行っております。しかし、滅菌後に処置具の破損トラブルが短期間に何度も起こるトラブルがありました。処置具の乾燥時間を長くしたり、オートクレーブ装置の取扱いを見直すことで継続的なトラブル回避に繋がり、こちらにおいても効果を得ることが出来ました。今後も安全で安心出来る内視鏡検査が出来るように努めていきたいと思います。
内視鏡分野における技術や医療、機器は発展していくため、その都度新しい知識を習得し身に付けていくことが必要になると感じました。
湘南藤沢おぬき消化器クリニック
看護師 森山
医学講習会
先日、関東消化器内視鏡医学講習会に2日間参加してきました。
講師の先生方には、技師の視点からお話をしていただいたり、最近話題になっている医療情報を含めて講義していただき、とても有意義な時間を過ごすことが出来ました。
消化器に関する生理・薬理学、病理・解剖学、上部・下部消化管内視鏡学、感染管理学、医用工学と内視鏡検査に携わる上で必要な知識を改めて学ぶことが出来ました。学生の時に学んだ基礎医学も再度見直し振り返ることが出来、今後も専門的な知識を身に付けるためにも継続的な学習が必要になると感じました。
内視鏡検査の前処置・検査時の使用薬剤については、副作用の面や使用薬剤の半減期を考慮し注意して観察する必要があり、今後の患者さんへの指導に役立てたいと思います。また、内視鏡室の感染対策として各種消毒液の特徴や有効濃度の理解、内視鏡の洗浄方法を理解し実施しなければなりません。各種ガイドラインも適宜改定されているため、年に1度の見直しを行い安全な内視鏡診療が行われるよう、全スタッフで遵守することが大切になると感じました。
内視鏡分野及び消化器疾患における治療・診断方法、技術はどんどん新しいものが出てきており日々進歩しております。介助に携わる者として、それに追い付いていけるよう日々学習し習得出来るよう努力していきたいと思います。また、最新の医療情報から情報収集が出来るように常にアンテナを張ることも大切になると感じました。
湘南藤沢おぬき消化器クリニック
森山
社内講演会
8月の8日と22日の2日間、潰瘍性大腸炎を議題に、製薬会社主催社内講演会の演者を務めさせていただきました。当院では内視鏡診断・治療と共に潰瘍性大腸炎の診療にも力を入れております。私の講演以外にも、最新の治療薬の発表などもありとても有意義な時間となりました。今後の診療に取り入れていきたいと思っております。
今回の講演では、私が携わった症例の診断方法や治療方針、治療成績などを中心に発表
させていただきました。講演資料を作成するにあたり、過去の症例を振り返ることが出来、今後の治療に役立つ作業となりました。また、医師をはじめ潰瘍性大腸炎治療薬を扱う製薬会社の方々に新しい情報を提供することで、より他部門との連携した治療が行え医療の発展に繋がると実感し微力ではありますが、この様な活動を今後も続けていきたいとそのように感じております。
潰瘍性大腸炎は毎年新たな治療薬や診断法が次々と開発されており、それに伴いクリニックで治療可能な範囲も年々広くなってきていると感じております。ますます、他部門、他医療機関の先生方との情報交換の場が必須となり、我々も最新の医療を提供するため連携を強化していきたいと思います。
第8回 関東消化器内視鏡機器取扱い講習会(実践編)に参加してきました。
第8回 関東消化器内視鏡機器取扱い講習会(実践編)に参加してきました。
機器のトラブル対処法や日常点検の目的とポイントについて、機器の洗浄・消毒・滅菌について学ばせていただきました。
―スコープとシステムの点検、機器や処置具のトラブルシューティング―
日常点検により機器のトラブルを回避し、万が一トラブルが発生した時でも適切に対処し、安全に検査を実施していく必要があると考えます。そのためにも、検査に携わる看護師全員が日常点検の必要性を理解し、機器のトラブル回避方法を把握している必要があると感じます。
機器や処置具に不具合があることで、患者さんに苦しい思いをさせてしまう可能性があり、検査がスムーズに出来なくなります。そのため、トラブルを未然に防ぐことが出来るよう日々の検査前後の点検や定期点検、トラブルの早期発見・対処は重要になってくると感じます。今回学んだことを今後に活かし、内視鏡スコープや機器の点検・維持管理をしっかりと行いたいと思います。また、スタッフ間で統一した点検を実施できるように指導していきたいと思います。日々の業務に追われ、忙しい時こそ機器の取り扱いに細心の注意を払い丁寧な取扱いをしていきたいと思います。
―洗浄・消毒・滅菌について―
当院では内視鏡洗浄消毒に関するガイドラインに基づいて、当院に合ったマニュアルを作成し実施しております。すべての体液には潜在的に感染性があるものとして取扱い、使用した機器や処置具は高水準消毒液、酵素系洗剤、強酸性電解水により確実に洗浄消毒が行われています。また、周辺機器においても付着した細菌・ウイルスの殺菌、不活化が必要なため、使用機器に応じた洗浄・消毒・滅菌を行っております。内視鏡室、リカバリー室全体での感染対策を十分に行い、周囲の環境整備にも注意を払っていく必要があるため、医師・看護師間でのマニュアル実施の統一化をはかる必要があると感じます。そのためにも、各種消毒液の特徴や有効濃度の理解、感染対策の重要性を理解し実施していく必要があると感じました。検査を受けられる患者さん、及びスタッフが安全に安心して検査が出来るよう心掛けていきたいと思います。
すでに当院でも実施している点検方法や洗浄方法もありましたが、今回講習会に参加することで再確認することが出来、より一層安全に検査が実施出来るよう配慮していきたいと感じました。また、各種ガイドラインも適宜改定されているため、常に最新の情報に注意してより安全な内視鏡診療が行われるよう心掛けていく必要があると感じました。
湘南藤沢おぬき消化器クリニック
主任看護師:森山
関東消化器内視鏡技師会 第20回レベルアップ講習会に参加してきました。その2
―炎症性腸疾患の内視鏡診断と治療―
炎症性腸疾患IBDの患者数は年々増え続けており、今後さらに増えることが予測されております。しかし、病状に合った適切な治療を受けることで病気の活動性を抑え、QOLを維持出来るようになってきております。講義では潰瘍性大腸炎とクローン病の疾患の特徴や内視鏡像、治療選択について学びました。また、上記に対し、内視鏡的な粘膜治癒を達成できるよう治療し評価していく必要性を学びました。
IBDに対する使用薬剤もどんどん新しいものが登場しており、当院では5-ASA製剤をはじめ、ステロイド製剤、抗TNFα抗体製剤(レミケード、ヒュミラ、シンポニー)を採用しております。私たち看護師も使用薬剤についての知識を身に付け、内視鏡的な粘膜治癒の理解を深めていく必要があると感じました。
―急性下部消化管出血について 大腸憩室へのアプローチ―
食生活の欧米化や食物繊維の摂取低下による便秘、加齢などが憩室が出来る原因とされており、年々増加傾向にあります。講義では、大腸憩室出血と内視鏡的な止血術について学びました。憩室出血に対し内視鏡で出血点を確認する際は、内視鏡の先端にアタッチメント(奥行きが深いフード)を取り付けること、ウォータージェットを使い洗腸することで出血点が発見しやすく観察や速やかな処置を行うことが出来ることを学びました。また内視鏡治療のクリップ法については、露出血管を把持するようにクリップする方法や憩室口を塞ぐように止血する方法を学びました。出血病変に対しての適切なクリップの選択及びクリップ操作をマスター出来るように手技の習得に努めていく必要があると感じました。また、術中・術後のバイタルサインの変化に対応出来るように十分な観察を行い、速やかに適切な処置が出来るように知識や技術の向上に努めていく必要があると感じました。
湘南藤沢おぬき消化器クリニック
主任看護師 森山
関東消化器内視鏡技師会 第20回レベルアップ講習会に参加してきました。その1
関東消化器内視鏡技師会 第20回レベルアップ講習会に参加してきました。
消化器内視鏡に関する基礎講義では、内視鏡検査と診断、内視鏡的治療について学ばせていただきました。
―高齢者のESDについて―
食道や胃、大腸の壁は粘膜層、粘膜下層、筋層の3層からできており、癌は粘膜層から発生します。早期の病変に対して、胃カメラや大腸カメラで消化管の内腔から粘膜層を含めた粘膜下層までを剥離し病変を一括切除する治療法ESD 内視鏡的粘膜下層剥離術は、画期的な治療法として確立されております。一括切除により局所の再発率を下げることが出来るようになり、さらに顕微鏡による正確な病理診断が出来るようになります。当院ではESDは実施しておりませんが、今回講習会に参加することによりESDの治療適応、実施方法、ESDのメリット及び偶発症について学ぶことが出来ました。特に高齢者では生理的特徴を理解し、術前における十分なインフォームドコンセントと全身状態を併せて、適切な治療方針を立てる必要性を学びました。高齢者は術中・術後のバイタルサインが変化しやすくなるため、特徴を踏まえ十分な観察及び安全管理を行う必要性があると感じました。また高度な技術を必要とするため、偶発症の危険性を理解し必要な知識や技術を習得していく必要性があると感じました。
―胃・十二指腸・空腸の止血術―
消化管出血に対する止血術では、出血の原因病変、アナムネ聴取、出血に対する検査及び救急初期対応について学びました。中でも特に関心を持った内視鏡止血術がありましたので紹介させていただきます。
講義して下さった医師の病院では、消化管出血に対し内視鏡中に視野確保が困難になった時に透明なゼリー(経口補水液 OS-1ゼリー)を鉗子口から注入し視野確保を行い、止血術を行っているそうです。ゼリーで満たされた空間は透明になり、出血点が見つかりやすくとても有効な方法とされているそうです。
事前情報から出血点を予測し、安全でより効果的な内視鏡治療を工夫しながら行っていくことが大切になると感じました。
―大腸ポリープに対する内視鏡治療戦略―
近年は大腸癌が増え続けており、男女とも罹患率・死亡率ともに上位を占めております。しかし、40歳以上が対象となる大腸がん検診(便潜血検査)の受診率は25%~30%と低く問題となっております。今回受講し、大腸がん検診の受診率の低さに驚きました。藤沢市でも今月から大腸がん検診が始まりました。是非対象になっている方には検診を行っていただき、病気の予防・早期発見・早期治療を行って欲しいと思います。
大腸内視鏡検査の質を向上させるためには、腺腫検出率(ADR)を25%以上に上げ癌の発生や死亡率を低下させること、さらに検査時における盲腸到達率を90%以上に努め、ガイドラインに沿った適切な検査間隔の設定をすることが大切になることを学びました。最小の検査回数で最大の大腸癌予防効果を得るためには、ADRの向上につとめ、発見した腫瘍性ポリープの全摘出(クリーンコロン)を目指し、再発を起こさない丁寧な観察及び適切な治療が必要になることを学びました。
大腸ポリープの治療法の中にコールドポリペクトミーというものがあり、当院でも昨年から取り入れ実施しております。10ミリ以下の良性腫瘍に対して有効であり、術後の後出血や穿孔が起こりにくいため安全性が高く、完全切除率も高いと報告されております。どの治療法に関しても、看護師は切除方法の特徴と合併症についての適切な知識を持っておく必要があると感じました。またポリープの遺残が起こらないように丁寧に一括切除を行う方法(処置具の使用方法など)を改めて学ぶことが出来、今後に活かしていきたいと思いました。
湘南藤沢おぬき消化器クリニック
主任看護師 森山
第37回 神奈川消化器内視鏡技師研究会に参加してきました。
先日、第37回 神奈川消化器内視鏡技師研究会に参加してきました。その中で、いくつか興味関心を持った研究発表がありましたのでご紹介いたします。
~大腸内視鏡挿入困難症例に対しての用手圧迫法の工夫について~
内視鏡挿入時の用手圧迫とは、内視鏡が進みにくい場合に、内視鏡がたわむ部位や先端部分を体外的に腹壁から押さえて内視鏡を進めやすくする介助法です。
屈曲の強い腸管の過伸展や癒着を伴う場合、また短縮が難しい場合などの挿入困難例に対しての用手圧迫はとても難しく、モニター画面をみて確認しながら行っていてもうまく用手圧迫が出来ず、内視鏡がスムーズに進まず苦痛を伴ってしまうことがあります。看護師は効果的な用手圧迫を行うためにも大腸の解剖と、内視鏡の挿入位置や形状をイメージし、圧迫する部位や手の置き方、力加減などポイントになる点を理解していく必要があると感じます。また、日々の経験の積み重ねと、施行者である医師とのコミュニケーションが大切になると感じます。
発表の中にありました婦人科手術の癒着症例や胃癌などの上腹部手術症例、肥満型の体型症例に対しての用手圧迫法の工夫は、とても貴重な学びとなり今後の検査介助に活かしたいと思いました。その内容を少し紹介させて頂きます。婦人科手術の癒着症例では恥骨の上を指先で背中側に押し、上腹部手術症例では創部を指先で背中側に押すことで効果が得られるそうです。また、肥満型の横行結腸では両手の平で臍上腹部を背中側に抑え込むか、効果がなければ上腹部を上下から挟み込むことで有効な用手圧迫を行うことが出来るそうです。
効果的な用手圧迫は、内視鏡の挿入を助け時間短縮にも繋がり、さらに患者さんの苦痛を緩和させるため、介助に入る看護師は技術の習得が出来るよう日々努力していく必要があると感じました。
~内視鏡介助者の新人教育における技術・知識向上の工夫~
こちらの表題に関する沢山の研究発表があり、内視鏡検査説明をマニュアル化している所、技術チェックリストを活用し実施・評価している所など、参考になる点がいくつかありました。
当院でも内視鏡介助未経験の看護師に対し、マニュアルに基づいた指導及び、注意事項の口頭指導、一人ひとりの技術の習得状況に合わせた段階的な指導を日々行っております。また、検査前の事前説明に関しては受付を含め全スタッフが説明出来るように繰り返し指導を行っております。
患者さんが安心して安全・安楽に検査を受けられるように、スタッフ全員で連携をとり介助していく必要があると感じます。そのためには、安全で安心できる環境づくりや専門的な知識・技術の習得が必要になると思います。限られた業務時間内での指導の難しさもありますが、内視鏡介助に携わる看護師全員が専門知識や技術の向上につながるよう日々自己研鑽し、努力していく必要があると感じました。
今回の研究会で得た学びを、今後に活かしていきたいと思います。
湘南藤沢おぬき消化器クリニック
主任看護師 森山