クローン病とは
クローン病(Crohn’s Disease)は、大腸や小腸の粘膜に慢性の炎症や潰瘍を引き起こす原因不明の炎症性腸疾患のひとつです。口から肛門まで、消化管のあらゆる場所に炎症や潰瘍が起こり、特に小腸と大腸を中心とした小腸末端部に起こりやすいと言う特徴を持っています。複数の病変の間には正常部分が存在します。主に10歳代~20歳代の若年層に多く、男性に多い傾向があります。
厚生労働省の特定疾患に指定されており、成25年度には39,799人が特定疾患医療受給者証の交付を受けています。
※クローン病活動期は、入院での治療が必要な場合が多いため、活動期は信頼できる医療機関にご紹介させていただくことがあります。一旦症状が改善され、定期的な通院のみで治療が可能となった場合は、当院にて行なっております。
症状
病変が起こっている場所が、小腸型、小腸・大腸型、大腸型で変わってきますし、消化管以外に起こる症状も多彩で、さまざまな合併症も存在します。
代表的な症状には、腹痛と下痢がありますが、これが起こらないケースも珍しくありません。肛門に病変が現れる場合も多くなっています。
下血、腹部腫瘤、体重減少、口内炎といった消化器から起こる症状や、発熱、全身倦怠感、貧血など全身に現れる症状が起こる場合もあります。
合併症では、腸管に穴が開く瘻孔(ろうこう)、腸管が狭まる狭窄(きょうさく)、膿の袋ができた膿瘍(のうよう)などがあります。また、関節炎、虹彩炎、結節性紅斑、肛門部病変などが合併症として起こる場合もあるため、慎重に見極めることが重要です。
また、治療により症状が治まっても病気が進行していくケースがよくあるので、定期的に検査を受けて状態をきちんと把握する必要があります。
クローン病の原因
はっきりした原因はわかっていませんが、先進国に多く、動物性脂肪やタンパク質を多く摂取するとリスクが上がるとされています。遺伝病ではありませんが、遺伝的な要因の関与が考えられており、複数の遺伝子や環境因子などによって発症すると見られています。喫煙もリスクを上昇させるため、禁煙も重要です。
クローン病の治療方法
腸に起こっている症状や血液検査による貧血などがあった場合、クローン病が疑われます。そして、内視鏡検査や小腸造影などによって特徴的な病変があればクローン病と診断されます。内視鏡検査時に採取した組織の生検や、肛門病変などが診断に役立つ場合もあります。潰瘍性大腸炎とクローン病は全く異なる疾患ですが、診断困難な時期があります。これを防ぐためには、定期的な内視鏡検査が有用です。
クローン病の治療では、食事によるクローン病悪化を避けることが最も重要です。そのため、栄養療法や薬物療法などの内科的な治療が中心です。ただし、腸閉塞や穿孔、膿瘍などが起こっている場合には外科治療や内視鏡的治療が必要です。症状が治まっている寛解状態でも、クローン病はひそかに進行しているケースが多いため、定期的に受診して状態を確認しながら治療を続けていく必要があります。
栄養療法
経腸栄養療法には、脂肪をほとんど含まない成分栄養剤、少量のタンパク質と脂肪含量がやや多い消化態栄養剤の2種類がありますが、どちらも主体となるのは抗原性を示さないアミノ酸です。
強い狭窄があったり、広範囲に小腸病変がある場合には、経腸栄養療法が行えないため、静脈から栄養を補給する完全中心静脈栄養を使用します。
落ち着いてきたら通常の食事に近いものも摂取可能になりますが、病変部位や消化吸収機能により注意するポイントが変わってくるため、医師や栄養士と相談して食事内容を決めていきます。一般的には、小腸に病変がある場合は低脂肪を、狭窄がある場合には食物繊維の少ない低残渣(ていざんさ)が適しています。特に動物性脂肪は炎症を悪化させる可能性が高いため、注意が必要です。お一人おひとりに合う食材は異なりますので、自分に合ったものを見つけていくことも重要です。また、タンパク質、カロリー、ビタミン、ミネラルの欠乏が起こりやすいため、食事内容は食材だけでなく、量や摂取するタイミングなども考慮する必要があります。症状が落ち着いて安定している寛解期にも避けた方がいい食品や控える必要があるものはありますが、過度に神経質にならないようにしてストレスをできるだけ軽減しましょう。
薬物療法
症状を改善するために5-アミノサリチル酸製薬、副腎皮質ステロイドなどの内服薬を使い、改善後は再燃予防のためにステロイド以外の薬を継続して服用します。
ほかに、免疫を調整して炎症反応を抑える抗TNFα受容体拮抗薬や血球成分除去療法を行う場合があります。なお、血球成分除去療法は薬物療法ではなく、血液中から異常に活性化した白血球を除去する治療法です。
外科治療・内視鏡的治療
狭窄や穿孔、膿瘍などの合併症には外科手術が検討されます。
小範囲の切除や狭窄形成術などで、できるだけ腸管を温存できるようにします。
また狭窄では、内視鏡で狭窄部を拡張する治療も可能です。
生活習慣について
タバコはクローン病の発症や寛解後の再燃率などに関わっていることがわかっていますので、禁煙してください。
症状が落ち着いている時期には、食事以外の制限は基本的にありません。アルコールも少量でしたら問題ないと考えられています。ただし、過労やストレスが症状を起こすきっかけになる場合もあるのでご注意ください。また、栄養療法や入院が必要になる場合もあることを周囲に理解してもらうことも大切です。うまく病気と付き合って、症状がない寛解状態をできるだけ長期に渡って維持できるようにしていきましょう。
妊娠とクローン病治療
クローン病にかかっていても、寛解期であれば妊娠や出産に特に大きな問題が起こる可能性はないと考えられています。ただし、治療を継続するため、妊娠中でも比較的安全な薬を使用する必要があります。妊娠を考えている場合には、主治医とあらかじめ相談してください。
また、授乳中の薬剤が母乳に移行する量はかなり微量だとされていますが、これに関してもあらかじめ主治医としっかり相談してください。